月別: 2018年1月

さぶたいとる

2018年1月18日(木曜日)

イルカ達、テレビで育児のお勉強

イルカの出産、なかなか子供がうまく育たないんです。

お母さんが初産の場合は、子供の生存率がさらに下がります。

なぜでしょう。

 

生まれたばかりの子供は、遊泳能力が低く、水面で呼吸するのがやっとで方向転換もうまく出来ません。イルカのお母さんは、子供と一緒に並んで泳いて子供をサポートします。一緒に並んで泳ぎながら、子供は母親のおっぱいを探します。イルカのおっぱいは、背びれと尾ビレの中間のお腹側にあります。子供がおっぱいを探しやすいように、自分から積極的におっぱいを子供に近づける母親もいます。

子供がミルクを飲めれば、とりあえず一安心。

でも、ここまでたどり着けないことがあります。

 

出産後うまくいかないパターンは

・母親が子供と一緒に泳がない

・母親が子供を攻撃する

・子供がおっぱいに近づくとお母親が避ける

・子供がおっぱいを見つけられない。

・同居個体が子供を攻撃する

・同居個体が子供を母親から奪い取ってしまう

・母親と同居個体の闘争に巻き込まれ子供が溺れる

 

うまくいかない原因の一つとして

群れの中で他個体の出産や子育てを見て学習しているんじゃないか?

他個体の出産・育児を見る経験不足が原因か?

などと言われています。

 

であれば、海きららのイルカ達にも他個体の出産や授乳、子育てなど見せてあげよう。

 

ということで、

イルカの出産シーンや、授乳シーンをテレビで見せることにしました。

 

使っている映像は、

市立しものせき水族館「海響館」

新江ノ島水族館

2つの施設から提供していただきました。

両園館とも「何かありましたらいつでもご相談ください、応援しています」とのこと。

貴重な映像だけでなくさらに暖かい言葉まで、本当に感謝です。

多くの方のご好意でいろんなことにチャレンジできているんだなーと、改めて思いました。

 

イルカ達に映像を見せているのは夕方、暗くなるまでの時間、出産まで毎日見せようと思っています。

 

 

映像を見ているイルカ達はというと、一応興味は持っているようで、時々、

 

口を大きく開けて

鼻からエアーを出しながら

「ブーーーー」

 

 

これって、一般的に他個体を威嚇するときにする行動なんですけど。

怒ってる?ふざけてる?

本気で怒っているようには見えませんが、何の意思表示でしょうか。

ちなみに、この行動、ナミとニーハの映像を流したときにもやってたんだよなー。

 

少しでも出産・育児がうまくいくように必死になって考え取り組んでいる担当者に対して、

今日も自由すぎるナミとニーハでした。

2018年1月17日(水曜日)

愛知/岐阜極秘?会議(妊娠までのストーリー⑥)

イルカの人工授精に向けて、実際に動き出しましょう!

ということで平成29年7月中旬、打ち合わせのため愛知県の南知多ビーチランドに三重大学と海きららが集合。岐阜大学は当日参加できなかったため、翌日海きららスタッフが岐阜県の岐阜大学へ出向くことになりました。

 

 

 

それぞれの施設の役割分担や基本方針などを確認し、どの様な方法で人工授精を行なって行くか具体的な話をしました。

難しい専門用語が飛び交います。

ちなみに人工授精はAI(えーあい)と言うらしいです。

話をすればするほど、かなり難しいことに挑戦しようとしているんだなーと改めて実感しました。

 

打ち合わせ内容の一部をご紹介。

 

精子について。

凍結した精液を解凍して使う方法と、冷蔵保存した精液を使用する方法があります。

凍結すると長期間保存が可能ですが、特殊な機材と冷凍する技術が必要です。冷蔵では長期保存が出来ないのですが、取り扱いは比較的簡単です。

議論の結果、今回は冷蔵保存で行うことになりました。

冷蔵保存するには、特殊な溶液で希釈する必要があります。希釈方法は、三重大学に教えて頂けることになりました(感謝です)。

この日、精液採取のデモンストレーションを見せてもらいました。この日は何の問題も無く簡単に精液が取れて、取れた精液を顕微鏡でみたら、元気な精子が沢山動いていました。精液の採取、精子の数と運動性、全て問題無しです。

ただし、冷蔵した精液を輸送した実績はありません、輸送しても精子が生きているかはやってみるしかありません。

 

「海きららに生きた精子は届くのだろうか?」

 

次にメスイルカの排卵予測について。

排卵からズレて人工授精を行うと、受精の確率はドーンと低下します。受精が成功した例では排卵の前後数時間以内に人工授精を行っています、できれば排卵前に行いたいところです。

そのためには、排卵のタイミングをかなり高い精度で予測する必要があります。

排卵の予測には、エコーを使って卵胞の成長を追跡する方法があります。しかし、どのくらいの大きさで排卵するか数年かけて事前にデータを蓄積しておく必要があります(これが人工授精に数年かかる理由の一つです)。海きららでは過去のデータが無いので、エコーだけではちょっと心配です。

他にホルモンを追跡する方法があります。血液、尿、糞などに含まれているLHというホルモン(黄体形成ホルモン)が排卵前に急上昇して急降下します(LHの上昇開始から排卵までが32~35時間、LHのピークから排卵までが20~26時間)。

これをLHサージ」といいます(覚えておいて下さいね)。

 

LHサージを捉えることができれば

排卵がいつ起こるか予測できる!

バッチリのタイミングで人工授精が出来る!

受精の成功率上昇!

 

ということで、LHの値をリアルタイムで知りたいのですが、大学や検査センターなどに依頼していては結果がでるまでに時間がかかりすぎてダメです。

はてさて、どうする?

動物のホルモン動態にかなり詳しい岐阜大学が一緒に考えてくれることになりました(感謝です)。

 

「排卵予測どうする?」

 

さらに、どうやって子宮まで内視鏡を挿入するかもまだ解決していません。

本番までに内視鏡の挿入を何度か試してみることにしました。

 

経口黄体ホルモン製剤を使用し、平成299月中旬に排卵が来るよう調整することにしました。ということで、人工授精は9月中旬の予定です。

簡単には解決できない問題・課題がびっくりするほど盛りだくさん!

 

「人工授精までに準備が間に合うか?」

 

つづく・・・。

 

2018年1月13日(土曜日)

ニーハ、本日のエコー検査

ニーハのエコー検査を行いました。

今日も順調、問題なしです。

すこし大きくなったかな。

羊水もたっぷり、胎子はちょっと動いてます。

 

 

胎子の成長は順調ですが、ショーやトレーニングでの集中力がかなり下がってきてます。

ニーハだけでなくナミも、いやむしろナミのほうが不安定。

トレーナーはとっても苦労しています。

この不安定さは、妊娠中はもちろんのこと、出産後もしばらくは続くことでしょう。

 

こんなときはどうするか、

もちろん無理はさせません、出来ないこともやらせません

 

イルカの出来る範囲内で、イルカのやりたいことをやるのが海きららの方針です。

イルカのテンションをアゲて、やる気にさせるのがトレーナーの腕のみせどころ。

イルカ達にショーを楽しんでもらえるよう、あんなことや、こんなことなどいっぱい工夫します。こんな時のトレーナーはかなり神経を使うので、ショーが終わると抜け殻のようにぐったりします。

 

でも、この工夫、ちょっと見ただけではなかなかわかりません。

何度も見ていただくと、種目の順番が変わっていたり、サインを出すタイミングを変えていたりと、いろんなことに気づくと思います。

 

また、どんなに工夫しても毎回うまくいくとは限りません。

うまくいかないときでも、トレーナーは笑顔、苦しんでいる姿は見せないように努力していますが、

多分イルカ達には

 

「ばれてます」。

 

イルカ達も困っているトレーナーを見て楽しんでいるように見えます、いや、絶対に楽しんでます、多分。

イルカ達に振り回され、ステージの上で困っているトレーナーをぜひお楽しみください。

2018年1月12日(金曜日)

ちょっと太りすぎたかな?まだ大丈夫!

 

今日は体重測定を行いました。

イルカ達に体重計の上に自主的に乗ってもらって計測します。

ハズバンですね。

 

前回、体重測定をしたのは昨年末、12月29日です。

だいたい2週間おきに体重を量っていて、2週で約5kgづつ体重が増えていました。

 

体重の増減は、食事の量(カロリー)だけでなく、トレーニング内容、遊びなどの運動量、水温、気温、健康状態などの影響を受けます。

イルカのトレーナーは、イルカの行動をよく観察して、健康状態については獣医とよくコミュニケーションをとり、そして目標体重を設定して、イルカの食事の量と内容を決めていきます。

今日の体重測定では、2週間前より約5kg増が目標でした。

 

「なんだか最近ニーハずいぶん丸くなったよね」

「ちょっと太りすぎのような気がするが・・・・」

 

最近、トレーナーたちはこんな話をしていて、体重が増えているんだろうなーと予測はしていたのですが、測ってみてびっくり

 

「272kg、前回より2週間で13kg増えてまーす」

 

ニーハにとっては過去最重量、ちょっと一気に太りすぎました。

どおりで、動きがのんびりで重―い感じ、ジャンプも低いわけです。

 

食事の量の調整が必要ですね。

妊娠すると太りやすくなるのでしょうか。

ニーハにとっても胎子にとっても一番良い食事の量にしてあげたいのですが、果たしてどのくらいが良いのか、これまた手探り状態です。

 

まだもうしばらくは、体重計に乗ってもらう方法で体重を測ることができますが、胎子が大きくなってくると、体重計に乗れなくなります。

そうなると、胴回りの長さから、体重を推定する方法に変更していきます。

 

出産までには、あと20kg以上増やす予定です。

まん丸になってきたニーハもまた魅力的!

さらに丸くなりますので、ぜひニーハのぽっちゃり具合にご期待ください。

 

 

2018年1月11日(木曜日)

スタート出来るのかイルカの人工授精(妊娠までのストーリー⑤)

さて、イルカのようやくイルカの人工授精の話になってきました。

この先、さらに深く踏み込んでいきますよー。

ちょっと難しい内容も出てきますが、苦労や裏話など、可能な限り、ギリギリのところまで、出来るだけわかりやすく紹介したいと思いますので、ぜひお付き合いください。

もっと詳しく知りたい方は、ご来館いただきイルカスタッフを捕まえて 話しかけてみてください。できるだけお話いたします!

 

 

「つくみイルカ島」で自然繁殖に取り組んだナミとニーハ、

残念ながら妊娠には到りませんでした。

これからは人工授精にチャレンジです。

この時点で、平成29年7月、人工授精にチャレンジできるのは平成30年の3月末まで。

残された時間は約9ヶ月。

 

普通、イルカの人工授精は、緻密に計画して数年かけて基礎データをとって、じっくり行うもの。今回のタイムスケジュール、ちょっと無理がある?

 

いやかなり無理がある。

 

ですが、いただいたチャンスは最大限に活用、出来ることを限界までやりましょう。

 

人工授精はどのように行うか。

卵子を母体から取り出し、体外で受精させ子宮に戻す技術は体外受精と呼ばれ、未だイルカでは行われていません(海きらら調べ)。今回海きららで挑戦するのは人工授精、イルカの精子をメスイルカの子宮内に注入し、妊娠を期待する方法です。

 

具体的には

・元気な精子を必要な量準備して、

・排卵のタイミングに合わせて、

・メスイルカに注入、

あとは運次第!

 

過去の論文を調べてみると海外での人工受精の成功率は60%ぐらいでした(最近はもう少し向上しているようです)。海きららで行うとなると、たぶん成功率数%、もしかすると人工授精にたどり着けない可能性すらあります。

実績、情報、経験、時間、(お金も)全てが無い中で一つずつ解決していくしかありません。

 

イルカの人工授精を行うために解決しなければいけない問題は大きく3つです。

 

・元気な精子の入手

・排卵のタイミングの把握(いつ人工授精を行うか)

・精液の注入方法の検討

 

しかし、3つとも簡単に解決できる問題ではなく、もちろん海きらら単独では解決できません。

 

まずは精子について。

 

人工授精で使用する精子は、他の施設から提供していただく必要があります。

条件は

・オスを飼育していること

・オスに繁殖能力があること

・精液が採取できること(ハズバンダリーで採取します)

・精子提供できる体制であること

なかなか条件が合う施設が無い中、愛知県にある

 

「南知多ビーチランド」

 

が協力していただけることになりました。

今回協力してくれるのはオスのハンドウイルカ「リオス」。

採取した後の精液の取り扱いも実は難しく、扱い方次第では精子が死んですぐに使えなくなってしまいます。

そこで、イルカの繁殖、特に精子の扱いについて日本で一番詳しい(海きらら調べ)

 

「三重大学大学院生物資源学研究科附属鯨類研究センター」

 

に協力を要請し、アドバイスをいただけることになりました。

実際の人工授精のタイミングで精子を入手するまでには、まだまだ長い道のりがあるんですが、それについては、また後ほど。

 

次に排卵のタイミングの把握について

 

イルカの人工授精の論文(英語です)を調べてみると、排卵の前後数時間内に人工授精を行うことで成功しています。できれば、排卵を事前に予測し、排卵の数時間前に人工授精を行いたいところです。いつ排卵するか、そして妊娠したあと妊娠が正常に継続されているかを知るためにホルモン状態をモニターすることが必要になります。

そこで、動物の繁殖生理に日本で一番詳しい(海きらら調べ)

 

「岐阜大学応用生物科学部 動物繁殖学研究室」

 

に協力していただき、メスイルカのホルモンの動きについて一緒に調べていくことになりました。排卵日が予測できるようになるまでにはまだまだ長い道のりがあるんですが、それについては、また後ほど。

 

さらに、精液の注入方法について

 

精液の注入には内視鏡を使います。

論文を調べたところ、人工授精で妊娠した例では、子宮もしくは子宮の奥にある子宮角に精液を注入していました。

しかしイルカのメスの生殖器は構造が複雑で、簡単には子宮までたどり着くことができません。特に途中に子宮の入り口を見つけることが難しく、発情時期(排卵時期)以外は進入が難しいとのことでした。

どこをどのように内視鏡を進めれば子宮にたどり着くのか、他の水族館や獣医に問い合わせても情報がありません。

この問題をどのように解決するか、子宮までたどり着くにはまだまだ長い道のりがあるんですが、それについては、また後ほど。

 

 

解決しなければならない問題は山積みですが、

人工授精へ向けて

 

「三重大学」、「岐阜大学」、「南知多ビーチランド」、「海きらら」

 

4者による合同チームが立ち上がりました。

このあと、少々遅れて

 

「神戸市立須磨海浜水族園」

 

も加わり5者の合同チームになります。

 

何とか人工授精を成功させたい思いで動き回っているうちに、多くの方々のご協力でイルカの人工授精にむけて最高の協力体制を構築することが出来ました。日本国内でこのような最高の協力体制でイルカの人工授精に臨んだのは初めてではないでしょうか(海きらら調べ)。

 

多くの人のご好意とご協力があって、なんとかスタートラインに立つことが出来ました、本当にありがとうございます。

 

この後どのような困難が待ち受けているのであろうか。

問題山積みのまま、人工授精に突き進んで行くのであった。

 

つづく・・・。

2018年1月9日(火曜日)

1/8 ニーハの様子、ナミの様子

・ニーハの様子

人工授精を行ったのが昨年の9/16なので、1/8で114日目となりました。

妊娠初期はエコーで胎嚢を探すのに苦労したのに、今ではどこに当てても見えるくらい胎嚢は大きくなりました。

 

 

胎子の成長も順調のようです。

大きさは17cmを超えてきました。多分20cmぐらいありそうです。

胎子は成長するにつれ体全体を見ることは難しくなり全長を測ることが難しくなります。

なので、胎子の成長は頭部と胸部の幅でモニターしていきます。

1/7は、頭部で3.6cm、胸部で3.81cmでした。

 

向かって右が胎子の頭側、左が尾ビレ側。

お休み中なのか、あまり動いていませんでした。

動いていると言われれば、尾ビレが微妙に動いているようにも見えます。

 

 

・ナミの様子

さて、ナミですが、どうも最近イライラしています。

トレーナーと遊んでいる最中に突然「ブー」と音を出したり。

遊んでいる最中にボールを激しく突き上げたり、壁を尾ビレでキックしたり。

11月に人工授精を行ったナミ、現在経過観察中、もしかしてもしかするともしかするかも。

ご期待ください。

 

 

*館内に妊娠情報をアップしています。

 展示用に使う写真を撮影中のイルカスタッフです!

2018年1月8日(月曜日)

女子連合強し!(妊娠までのストーリー④)

大分県にあるうみたま体験パーク「つくみイルカ島」へやってきたナミとニーハ。

新しい環境でなかなか落ち着きません。

ナミとニーハ2頭で並泳していることが多く、行動のバリエーションも単調です。

アテネにはあまり関心が無く、むしろ避けているような感じで、アテネが近づいてくると、「ブー」と音を出し威嚇します。

 

女子連合強し!

 

噛み付いたり、追尾することは無く、同居もできないという状況でありませんが、もう少しアテネを大事にしてくれてもいいのに。

時間とともに、仲良くなってくれることを願うばかりです。

 

「つくみイルカ島」では、ナミとニーハが排卵するかエコーで追跡します。

いくら交尾しても、排卵していなければ妊娠しません。

また、繁殖は身体の中のホルモンと密接に関係しているので、ホルモンの変動についても調べます。

輸送前に投薬していた黄体ホルモン製剤の効果はあったのでしょうか。

 

6月上旬のエコー検査、このころの獣医はまだエコー画像の読み取りに不安がある時期です。

ニーハについては「卵巣と卵胞ともにしっかり見えている、卵胞は順調に発育中」

ナミについては「卵巣は見えるが卵胞が見えない、発育してないのかなー?」

 

6月中旬のエコー検査では

ナミは卵胞が見えず「結局卵胞が育たなかったかも」

ニーハは「卵胞がまだ見える、ちょっとおかしい、いつ排卵するんだろう」

 

卵胞の中から卵子が排出され、卵胞が黄体に変化します。

卵胞は水分が多く、黄体に変ると中身がつまってきます。

構造の違いからエコー画像では卵胞は黒く見え(黒く抜けるといいます)、黄体は卵胞に比べてほんの少し白っぽく見えます。形状や場所はどちらも同じで違いを見分けるのは難しく、獣医はこの時も他の獣医に問い合わせしまくっていました、日本国内だけでなく海外の獣医さんまでにも。快く教えていただいた皆様、ご協力いただいた皆様、感謝、感謝です。

海きらら獣医がんばれ!

 

これが卵胞

 

こっちが黄体

 

*後のホルモン検査では、ニーハはしっかり排卵していたことがわかりました。

 ホルモンの検査結果とその時のエコー画像を見直し、勉強して獣医はエコー画像を読み取れるようになって行きます。

 

ニーハは交尾していれば妊娠の可能性があります。

ナミは妊娠の可能性が非常に低くなりました。

 

日中の観察では、相変わらず、女子連合とアテネが距離をとり、遊泳方向も逆泳ぎ。

物理的にも心理的にも距離はなかなか縮まらない。

ましてや交尾行動も見られず。

この状態は6月末、海きららへもどる時まで続きました。

それでも、観察できていない時間のほうが長く、もしかしたら交尾している可能性に期待するしかありません。

 

海きららへもどってきたのは6/26。

 

妊娠すると上昇する血液中のホルモン・プロゲステロンの値はどうなったでしょうか。

 

ナミは、ずっと低いままで上昇せず。

やはりダメだったかー。

 

ニーハの血中プロゲステロン値は

6/13 ちょっと上昇(おー、ちょっと期待)

6/20 さらにちょっと上昇(おおー、期待値上昇)

6/26 ちょっと低下(あれ、もしかして)

7/3  ゼロ(あー、残念!)

 

ナミ、ニーハともに妊娠しませんでした。

かなり期待していたのに、ほんとに残念。

「つくみイルカ島」での滞在期間が短かった?、相性の問題?、水温の変化が影響?。

 

これで、人工授精に取り組むことが決まりました。

 

つづく・・・。

2018年1月5日(金曜日)

超音波で卵巣をさがせ!(妊娠までのストーリー③)

繁殖を進めるときに、メスイルカの身体の中で卵子がどのくらい育っているかを知ることは非常に重要です。卵子は非常に小さいので、卵子が入っている袋(卵胞)の成長をエコー(超音波診断装置)で追跡していきます。

 

卵胞は卵巣の中につくられます。

排卵すると卵胞が見えなくなり、卵胞は黄体に変ります。この黄体は妊娠を維持するためのホルモンを出します。ただし妊娠していなければ黄体は消えて無くなります。黄体が消えた後、しばらくするとまた卵胞が成長してきます(性周期がうまく回っていれば)。

この1サイクルで約1ヶ月。

 

つまりイルカの繁殖を進めるためには、

卵巣、卵胞、黄体、この3つをエコーで見つけ追跡する必要があります。

 

イルカを毎回捕まえてエコー検査をする方法ではイルカに大きな負担となります。そのためイルカを捕まえず、トレーニングして検査に協力してもらう方法、ハズバンダリー、業界用語「ハズバン」でエコー検査を行います。検査一つおこなうにも、トレーニングが必要です。

 

獣医も海外の論文を探して、事前にしっかりお勉強。エコーでは卵巣や卵胞、黄体がどのように見えるかエコー画像を確認します。

 

いざ実際にエコーで探してみると、

 

ぜんぜんわからん!

 

「これかな」「あれかな」、わからないから時間もかかる。

時間がかかれば、イルカも我慢できず「イヤーーー」ってなるし。

 

記録した海きららのイルカ達のエコー画像と、論文に載っているエコー画像を何度も見比べ、さらに論文を探し、ほかの水族館の獣医さんにアドバイスをもらい、悪戦苦闘。

トレーナーもイルカにとって楽ちんで、獣医も見やすい体勢を探します。

そして何度か検査を行ううちに少しずつ解ってきました。

 

イルカの身体のこのあたりにこんな向きでプローブ(超音波が出るところ)を当てると、

筋肉の境目が斜めに走ってて、

そこから下側この辺に見えてくるのが卵巣で・・・

といった感じで。

 

イルカの身体に対して垂直にプローブを当てた画像、点線が卵巣、点線内に黒く丸く見えるのが卵胞。

 

 

イルカの身体に対して水平にプローブを当てた画像、点線が卵巣、点線内に黒く丸く見えるのが卵胞。

 

卵胞は黒くみえるのでわかりやすいですが、卵胞が発育していないと、卵巣を捜すのがとっても難しいです。

卵胞の大きさは1~2cm、大きなイルカの体の中からこの小さな黒いまるを探し出します。

 

皆さんも動画を見て、卵巣と卵胞を探してみてください。

 

検査をやればやるほどエコー画像の読み取りも出来るようになり、検査の所要時間も短くなりました。

検査は獣医とトレーナーの二人三脚、コンビネーションがうまく行くとイルカへの負担も少なくできます。

 

つづく・・・

2018年1月4日(木曜日)

「つくみイルカ島」へGO!・・・(妊娠までのストーリー②)

 

自然繁殖から取り組むことになったナミとニーハ。

 

妊活の舞台は大分県、うみたま体験パーク「つくみイルカ島」。

イルカ受け入れを快諾していただいた「つくみイルカ島」様、ありがとうございました。

 

海きららから「つくみイルカ島」への輸送は、平成29年5月中旬、滞在予定約1ヶ月半。

繁殖に向けて必要なことは

 

・滞在期間中にナミとニーハが発情し排卵すること

 

そのためには排卵のタイミングをコントロールすることが必要です。

イルカの排卵周期は約1ヶ月ですが、時には止まってしまう事もあり不安定です。

滞在期間中に確実に排卵させるために、経口黄体ホルモン製剤を使うことにしました。

このお薬を一定期間飲んだあと中止すると、卵胞(卵巣にできる卵子の入っている袋です)の発育が再開し、中止してから2~3週間後に排卵するらしいです。ほかの水族館で、この方法を使って妊娠・出産している事例があったので、今回はこの方法を試すことにしました。

*排卵誘発剤を使う方法ではどうもうまくいかないようです。

 

もう一つ必要なことは

 

・排卵のタイミングで交尾すること

 

これはイルカ達にまかせるしかありません、お互いに気に入ってくれることを願うばかりです。さらにその先、受精し着床するかは運次第ですが。

 

お相手は、「つくみイルカ島」で暮らしているオスイルカ「アテネ」、2004年7月26日「新江ノ島水族館」生まれです。

「新江ノ島水族館」様にもご協力いただき、今回の繁殖に参加できることになりました。

「新江ノ島水族館」様、ご協力ありがとうございました。

アテネは飼育下4世で、世界初の飼育下5世サワ(メス)のお父さんでもあります。

男前です!

 

実際に「つくみイルカ島」へ輸送したのは平成29年5月10日です。

 

輸送前には、関係するスタッフ全員が集合し、現場でそれぞれの動きを練習・確認しました。イルカは水中で暮らす動物、水中から吊り上げられ、輸送となると、かなりのストレスがかかります。段取り悪く手間取ると、しわ寄せはイルカに。

準備と段取り、かなり重要です。

 

  

 

イルカの輸送は担架に乗せたイルカをコンテナボックス(簡易の小さな水槽)に入れ、海水ごとトラックで運びます。トラックの荷台にはスタッフが乗り込み、体勢を直したり、水をかけたりイルカのケアーをします。輸送の所要時間は、約4時間30分、使用したトラックはエアサス、運転手さんのブレーキング技術も最高、快適でした。

 

「つくみイルカ島」のアテネが暮らす生簀へ到着したナミとニーハ、さて自然繁殖はうまくいくのでしょうか。

 

続く・・・。

2018年1月3日(水曜日)

事の始まり・・・(妊娠までのストーリー①)

1年の始まりということで、そもそもなぜイルカの人工授精に取り組むことになったのか。

 

イルカの導入(イルカの飼育頭数を増やすこと)について本格的に議論を開始したのは平成28年です。

 

イルカを導入する方法は3つ。

 

・和歌山県太地からイルカを購入する

・他園館から購入や借り受けを行う

・繁殖する

 

それぞれにメリット、デメリットがあり、どれで行くか、非常に悩ましいところでした。

 

海きららでのイルカ飼育方針は、

「イルカにとって楽しい時間をつくり、海きららをイルカにとって楽しい場所にする」

イベントやショーを組み立てるときも、やろうとしている企画が「イルカにとって楽しいものなのか」を意識しています。

 

イルカの導入についても、今飼育しているナミとニーハにとって一番良い方法を選択しよう!

 

人間側の勝手な考えではありますが、

動物は、交尾し、出産し、子育てをしたいという欲求があるのではないか。

ナミとニーハも本当は子育てしたいのではないか。

であれば、ナミとニーハに子育てさせてあげたい!

 

ということで、繁殖を第一選択とすることになりました。

しかし、協議の結果諸事情から、繁殖に挑戦できるのは平成29年度だけ。

平成30年3月末までに繁殖の目処が立たなければ、太地町から購入する。

 

繁殖には自然繁殖と人工授精があります。

まずは、自然繁殖を試し、ダメだった時には人工授精にチャレンジ、という方針です。

 

 

イルカの繁殖は非常に難しいんです。

流産や死産が多く、出産までたどり着いたとしても、育児放棄や授乳失敗、仔の感染症など多くの難関が待ち受けています。ましてや人工授精となると、受精・妊娠する確率もかなり低くなります。人工授精で妊娠し出産に成功しているのは日本で2例のみ、高度な技術を必要とします。

 

それでも繁殖を選択したのは、

繁殖がナミとニーハにとって一番良いと判断したからです。

やるからには、なんとしても繁殖させたい。

 

 

タイミングを同じくして、イルカプールの内側の塗装が劣化してきており、塗り直しが必要でした。プール塗装のためにはナミとニーハを一時的に搬出する必要があります。繁殖能力のある雄イルカを飼育している施設にナミとニーハを輸送し、自然繁殖をねらい、その間にプールの塗装工事も行うことに。

 

条件に合う施設が、大分県にある「つくみイルカ島」でした。

そこで、ナミとニーハを大分県の「つくみイルカ島」まで輸送することにしました。

 

続く・・・。

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