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さぶたいとる

2018年1月11日(木曜日)

スタート出来るのかイルカの人工授精(妊娠までのストーリー⑤)

さて、イルカのようやくイルカの人工授精の話になってきました。

この先、さらに深く踏み込んでいきますよー。

ちょっと難しい内容も出てきますが、苦労や裏話など、可能な限り、ギリギリのところまで、出来るだけわかりやすく紹介したいと思いますので、ぜひお付き合いください。

もっと詳しく知りたい方は、ご来館いただきイルカスタッフを捕まえて 話しかけてみてください。できるだけお話いたします!

 

 

「つくみイルカ島」で自然繁殖に取り組んだナミとニーハ、

残念ながら妊娠には到りませんでした。

これからは人工授精にチャレンジです。

この時点で、平成29年7月、人工授精にチャレンジできるのは平成30年の3月末まで。

残された時間は約9ヶ月。

 

普通、イルカの人工授精は、緻密に計画して数年かけて基礎データをとって、じっくり行うもの。今回のタイムスケジュール、ちょっと無理がある?

 

いやかなり無理がある。

 

ですが、いただいたチャンスは最大限に活用、出来ることを限界までやりましょう。

 

人工授精はどのように行うか。

卵子を母体から取り出し、体外で受精させ子宮に戻す技術は体外受精と呼ばれ、未だイルカでは行われていません(海きらら調べ)。今回海きららで挑戦するのは人工授精、イルカの精子をメスイルカの子宮内に注入し、妊娠を期待する方法です。

 

具体的には

・元気な精子を必要な量準備して、

・排卵のタイミングに合わせて、

・メスイルカに注入、

あとは運次第!

 

過去の論文を調べてみると海外での人工受精の成功率は60%ぐらいでした(最近はもう少し向上しているようです)。海きららで行うとなると、たぶん成功率数%、もしかすると人工授精にたどり着けない可能性すらあります。

実績、情報、経験、時間、(お金も)全てが無い中で一つずつ解決していくしかありません。

 

イルカの人工授精を行うために解決しなければいけない問題は大きく3つです。

 

・元気な精子の入手

・排卵のタイミングの把握(いつ人工授精を行うか)

・精液の注入方法の検討

 

しかし、3つとも簡単に解決できる問題ではなく、もちろん海きらら単独では解決できません。

 

まずは精子について。

 

人工授精で使用する精子は、他の施設から提供していただく必要があります。

条件は

・オスを飼育していること

・オスに繁殖能力があること

・精液が採取できること(ハズバンダリーで採取します)

・精子提供できる体制であること

なかなか条件が合う施設が無い中、愛知県にある

 

「南知多ビーチランド」

 

が協力していただけることになりました。

今回協力してくれるのはオスのハンドウイルカ「リオス」。

採取した後の精液の取り扱いも実は難しく、扱い方次第では精子が死んですぐに使えなくなってしまいます。

そこで、イルカの繁殖、特に精子の扱いについて日本で一番詳しい(海きらら調べ)

 

「三重大学大学院生物資源学研究科附属鯨類研究センター」

 

に協力を要請し、アドバイスをいただけることになりました。

実際の人工授精のタイミングで精子を入手するまでには、まだまだ長い道のりがあるんですが、それについては、また後ほど。

 

次に排卵のタイミングの把握について

 

イルカの人工授精の論文(英語です)を調べてみると、排卵の前後数時間内に人工授精を行うことで成功しています。できれば、排卵を事前に予測し、排卵の数時間前に人工授精を行いたいところです。いつ排卵するか、そして妊娠したあと妊娠が正常に継続されているかを知るためにホルモン状態をモニターすることが必要になります。

そこで、動物の繁殖生理に日本で一番詳しい(海きらら調べ)

 

「岐阜大学応用生物科学部 動物繁殖学研究室」

 

に協力していただき、メスイルカのホルモンの動きについて一緒に調べていくことになりました。排卵日が予測できるようになるまでにはまだまだ長い道のりがあるんですが、それについては、また後ほど。

 

さらに、精液の注入方法について

 

精液の注入には内視鏡を使います。

論文を調べたところ、人工授精で妊娠した例では、子宮もしくは子宮の奥にある子宮角に精液を注入していました。

しかしイルカのメスの生殖器は構造が複雑で、簡単には子宮までたどり着くことができません。特に途中に子宮の入り口を見つけることが難しく、発情時期(排卵時期)以外は進入が難しいとのことでした。

どこをどのように内視鏡を進めれば子宮にたどり着くのか、他の水族館や獣医に問い合わせても情報がありません。

この問題をどのように解決するか、子宮までたどり着くにはまだまだ長い道のりがあるんですが、それについては、また後ほど。

 

 

解決しなければならない問題は山積みですが、

人工授精へ向けて

 

「三重大学」、「岐阜大学」、「南知多ビーチランド」、「海きらら」

 

4者による合同チームが立ち上がりました。

このあと、少々遅れて

 

「神戸市立須磨海浜水族園」

 

も加わり5者の合同チームになります。

 

何とか人工授精を成功させたい思いで動き回っているうちに、多くの方々のご協力でイルカの人工授精にむけて最高の協力体制を構築することが出来ました。日本国内でこのような最高の協力体制でイルカの人工授精に臨んだのは初めてではないでしょうか(海きらら調べ)。

 

多くの人のご好意とご協力があって、なんとかスタートラインに立つことが出来ました、本当にありがとうございます。

 

この後どのような困難が待ち受けているのであろうか。

問題山積みのまま、人工授精に突き進んで行くのであった。

 

つづく・・・。