イルカ日記 Day: 1月 24, 2018

さぶたいとる

2018年1月24日(水曜日)

イルカの人工授精、子宮にたどり着けるのか(妊娠までのストーリー⑨)

 

平成29年8月~9月上旬ごろ、

全く見通しが立たない中で、イルカ達の協力でどうにかなりそうになってきたっていう話。

 

イルカの人工授精、精子を子宮より奥に届けたいのですが、そのためには、内視鏡の先端を子宮まで到達させる必要があります。

 

ところが、メスイルカの生殖器、構造が非常に複雑で、子宮まで到達するのは至難の業。

もちろん海きららではやったことがありません。

人工授精の本番までには、どこをどうやって進めばよいか解明する必要があります。

いろいろ調べてはみたものの、よくわかりませんでした。

 

ということで、事前テストを実際にやってみることにしました。

 

当初、イルカを捕まえて、鎮静剤を注射して・・・って考えていたのですが、この方法ではイルカにかかる負担が大きく、何度も試すわけにはいきません。

 

そこで、例のハズバンダリー。

イルカ達に協力してもらうことにしました。

 

イルカ達にはステージの上に自ら上がってきてもらいます。

横向きの体勢でじっと我慢。

この体勢で生殖孔から内視鏡を挿入、少しずつ前に進みます。

最初から長時間我慢は出来ないし、奥までの挿入なんてもってのほかです。

ほんの少し挿入できたら、短時間でOK!いっぱいほめます(餌をあげます)。

これを繰返すことで、より長時間、より深く内視鏡を挿入しても我慢できるようになります。

最長で10分間我慢できるようになりました。

 

長い溝(赤の矢印)が生殖孔

小さな溝(青の矢印)はおっぱい

一番左の溝(黄色の矢印)は肛門

 

生殖孔から内視鏡を挿入すると、入ってすぐのところで一旦抵抗があります。

ここは無理せず、ゆっくり通過。

 

さらに進むと、最初の関門、偽頸部入り口というところにたどり着きます。

ここは真ん中を進みます。

さらに進むと2番目の関門、偽頸部入り口と同じような構造がもう一つあるので、ここも真ん中を進みます。

すると・・・・行き止まり?

もう前には進めません、っていうかどこにも進める通路がありません。

 

正面が行き止り

 

どこかに子宮への分岐点があったのか?子宮頸部への入り口があるはずなのですが見つかりません。

ナミとニーハは何回も内視鏡の練習に付き合ってくれました(採血ほどイヤでは無いようです)。

 

内視鏡の映像を録画し、何度も見直し、論文を探し、解剖図と見比べ、作戦を立て、再チャレンジ。国内だけでなく海外の獣医さんにも聞いてみました。

でもわかりません、どうすれば子宮にたどりつけるのか?

 

何度チャレンジしても、なぜか毎回同じ場所にしかたどり着きません。

内視鏡の先端は行き止まりでストップ。

そんなことを繰返しながら、9月中旬、人工授精予定まであと数日。

メスイルカたちも排卵の準備が整いつつあります。

すると、ニーハの生殖器内部の構造に変化が!

内部の一箇所が腫れて膨らんできています。

 

腫れて膨らんでいる部分に内視鏡を進めたところ、

今までとは違う内壁のある部屋、子宮内へ進入することが出来ました。

本当に苦労しましたが、大きな進歩です。ナミとニーハありがとう!

 

内視鏡挿入についてわかったことは、

・行き止まりまで進んだらすこし戻る!

・腫れて膨らんできた部分に子宮へつながる子宮頸部への入り口が隠されている!

・腫れて膨らまないと、見つけられないし入れない!

・排卵が近づかないと腫れて膨らまない!

このデータは他の施設でも活用できるように、どこかの研究会か学会で詳しく発表することにしましょう。

 

実は、人工授精本番までに子宮まで内視鏡を挿入出来たのはニーハの1回だけ。

ナミは何度やっても入れませんでした。

 

この状態で人工授精へと突き進んで行きます、どうなるのか。

 

つづく・・・。

2018年1月24日(水曜日)

イルカの人工授精・精子の確保(妊娠までのストーリー⑧)

平成29年8月頃

 

精子の確保、人工授精を行う場合には必ず必要です。

他の動物では電気刺激を使用して採取する方法をとることもあるようですが、

イルカの場合は動物に負担の少ないハズバンダリーで行います。

精子提供に協力してくれるのは、南知多ビーチランドと須磨海浜水族園、

人工授精本番までに、精子が輸送に耐えられるのかテストが必要です。

人工授精まで残り1ヶ月を切ってきました。

 

 

しかし、

南知多ビーチランドのリオスの精液は精子濃度が低く採取も安定しなくなってしまいました。

須磨海浜水族園のカイリも同じような状況。

 

論文を調べてみても、精子濃度の季節変動があるとの情報は見当たりません。

考えられる原因は、体調の問題?、飼育環境の要因?、トレーニングの問題?。

 

精子を採取するために、南知多ビーチランドと須磨海浜水族園は、すーっごいがんばりました。

どのような努力を行ってきたのか紹介します。

 

精液採取はハズバンダリーで行います。

オスのペニスはお腹側にある生殖孔の中にしまってあります。

生殖孔付近を刺激してペニスを勃起させ、ペニスを手で刺激して射精させます。

 

どうすればうまく採取できるか、精子濃度が濃い精液を採取するにはどうすればよいか、いろんなところに情報収集行い検討を重ね試行を繰返します。

・採取時に尾ビレを保持しないほうが良いとか、

・ ペニスを刺激するときにラテックスの手袋をしていたほうが良いとか、

・お腹のこの辺りをこんな風に刺激すると勃起しやすいとか、

・勃起時間が短いと精液が薄くなるとか、

・勃起時間を延ばすためにはこんな風に刺激したほうが良いとか、

・個体によって最適な刺激の仕方が違うとか。

・採取する道具も、シリコン製の柔らかいもののほうが良いのではとか、

・射精の1回目は精液の量が多くて精子数が少なく、2回目、3回目と続けていくと精液の量は少なくなるものの、精子数は多くなる傾向があるとか。

 

南知多ビーチランドと須磨海浜水族園のスタッフは本当に努力されていました。

心から感謝いたします。

後々この苦労と努力が実を結ぶことになります。

 

最初に海きららに精液が届けられたのは平成29年8月下旬、須磨海浜水族園のカイリからです。このとき人工授精予定まで残りあと約2週間。届いた精子は生存率が低く生きているものも元気がいまいち。人工授精に使用できないわけではないですが、もう少し元気な精子が沢山ほしいところです。輸送中の温度変化もデーターロガーで記録し、最適な温度で輸送できるよう保冷剤の量を調整します。また精液の保管の仕方も工夫しました。

 

実は、人工授精本番までに出来た輸送のテストはこの1回限りで、南知多ビーチランドのリオスでは採取出来ていませんでした。

精子が確保できるのか、大きな不安を抱えたまま本番に向けて突き進んでいくのであった。

 

海きららに届いた精子の様子(輸送テスト時)

 

つづく・・・。